ネオン眩ゆい夜のパリを支配し、黄金の密輸で名をとどろかせているポウロ・レ・ディアム(ジャン・ギャバン)は60がらみの上品な白髪をたくわえた老紳士である。彼が詮議の厳しいヨーロッパ警察の警戒網を一体どのようにかいくぐって密輸を行っているのか謎であった。彼のうしろには親友バルテル(ゲルト・フレーベ)がいて、大胆な計画を発案し、ポロと山分けした金を妻のイレーヌ(ナディア・ティラー)に湯水のように浪費させていた。しかし安泰に見えたポウロの王国は何者とも知れぬ敵の攻撃にさらされ、黄金密輸団の心臓部にあたるロンドン、フランクフルトなどの都市で一斉に機関銃の洗礼を受けた。そしてその脅威はパリにまでのび、イレーヌが誘拐され、バルテルも毎夜脅迫にあっていた。周到な計画性と執拗で強力な攻撃をみせる敵の大立物はアメリカ人、チャールズ(ジョージ・ラフト)であると、そう断言したのはシカゴ・トリビューンの記者と称してポロのもとに転がりこんでいるマイクである。チャールズは実は、アメリカ秘密警察からポウロ一味に送りこまれたスパイで、近年キューバに流れる大量の黄金の出所をつきとめる使命を持っていた。チャールズはパリに乗り込みポウロに会見を申し込んだ。2回目の会見が終わり、微笑をたたえてポウロが部屋を出た瞬間、轟然たる爆発が起きた。チャールズとその一味は黒焦げの死体と化した。しかし外に出たポウロを待っていたのはノエル刑事とマイクであった。