マリア(ガブリエラ・トスカノ)は20歳。母親のマリアナ(マリー・ラフォレ)と共に、アルゼンチンからパリに亡命し8年になる。マリアの父は弁護士で政府に誘拐され行方不明となっている。亡命した母やその友人たちの数年前の境遇がマリアによって語られてゆく……。マリアナはアルゼンチンの有名な女優。彼女をとりまくダンサーや作曲家たちが集まって「ガルデルの亡命」という題の演劇を計画中で、連日、討論を交わしている。フランスの演劇関係者たち--ピエール(フィリップ・レオタール)やフロランス(マリナ・ヴラディ)も、マリアナ達への協力を惜しまないが、ラテン・アメリカ的創造方法には当惑していた。デカルト的合理主義の文化をもつフランス人には理解しがたいのだ。この作品はタンゴと悲劇と喜劇をかけ合せた作品(タンゲディア)で、この演劇台本は、ブエノスアイレスにいる内的亡命者ファン・ウノからレストランのナプキンや小さな紙きれの走り書きの形で郵送されてくる。この台本を基にしてパリのファン・ドス(ミゲル・アンヘル・ソラ)が曲をつけるのである。ある日、ファン・ウノからの郵送が途絶えたことから、ピエールとファン・ドスは衝突してしまう。パリに逃げのびてきた亡命者たちにとって、祖国への郷愁は抗いがたい。タンゲディアへの意欲を失せかけていたマリアナは、亡命作家ヘラルド(ラウタロ・ムルア)と共にノルマンジーのサン・マルティン将軍の家に行ってみることにした。フロランスからの要請で、再びタンゲディアを成功させようと決意を新たにするマリアナ。相変わらずウノからの連絡がつかないことに困りはてたマリアナたちは、しかし、そのまま芝居の完成を目ざすことにした。結末がなくても、いいのだ。彼らはそう結論に達したのだ。平和が訪れ、大人たちは帰国する。そして、パリに残ったマリアたちはタンゴを歌い踊り続けるのだった……。