1942年1月。第二次大戦下のイギリス、ロンドン郊外のある劇場。出しものは『オセロ』。演じるのはシェイクスピア劇団の座長(アルバート・フィニー)。そして、その舞台裏ではドレッサー(衣裳係兼付き人)のノーマン(トム・コートネイ)がせわしなく動き回っている。この座長は、サーの称号が与えられているほどの名優だが、全て目分の思い通りにならないと気がすまない文字通りワンマン座長だ。翌日、劇団は次の公演地であるブラッドフォードへと旅立った。その日の午後、一行は目的地に到着するが、座長は、有名なグランド劇場が空襲にあい焼け落ちてゆくのを目のあたりにして、精神錯乱の状態に陥った。通りがかったノーマンが、座長の異常に気づき病院に送る。今夜、何としても『リア王』を上演しなければならない……。ノーマンは焦った。刻々と迫る開演時間に、コーデリア役である座長夫人(ゼナ・ウォーカー)は茫然となった。そして、二十年近く劇団に打ち込んできた舞台監督のマッジ(アイリーン・アトキンズ)らは協議の結果、公演中止という結論を出した。とその時、病院をぬけ出して来た座長がそう白な顔で現われた。必死に『リア王』を演じさせようとするノーマン。しかし座長は、虚脱状態から抜け出すことができず、空襲におびえる哀れな老人のままだ。団員たちは不安をつのらせ、なかでも座長が最も苦手とするオクセンビー(エドワード・フォックス)は、冷ややかな視線を座長になげかけていた。座長は相変わらず不安定な状態が続き、まちがえて『オセロ』の扮装をしてしまう始末。開演30分前。ノーマンは孤軍奮闘で、どうにか準備をすませ、あとは開演のべルをまつばかりとなる。遠くで鳴りひびく空襲警報のサイレン。やがて『リア王』の幕が上がる。それは座長にとっては二二七回目の『リア王』だ。いざ舞台に立った座長は、全身の力をふりしぼって、いつになく力のこもった『リア王』を演じきるのだった……。