二十世紀初頭のグルジア。ピロスマニ(A・ワラジ)は長年奉公した地主の家を後に、トビリシの町へ旅立つ。転々と職を変え、流狼の日が流れていき、再びトビシリに舞い戻った彼は、友人ドミトリー(B・ツィプリヤ)と共に店を開くがピロスマニは商人には向かなかった。彼は昼間から乾し草を広げて横になり、客をながめたりしていた。まもなく、ドミトリーと仲違いをしたピロスマニに、店の品物を貧しい人々に分け与えて、店を閉じてしまう。再び流浪の生活が始まる。絵筆を手にした彼は、限りない愛情をキャンバスに託して大担に描き、明日なき日々を送る街の人々のささやかな支えとなる。だが、カフェで見染めた踊り子マルガリータ(A・ミンチン)への報われぬ愛は、ピロスマニを自暴自棄な生活へ追い込んでいく。彼は居酒屋を渡り歩く。そのころ、彼の作品が、この地にやってきたロシア人とフランス人2人の画家の目にとまり、彼はトビリシの画家たちの会合に呼ばれる。やっと幸せの陽がさし込み始めたかのようにみえたが、その会合はピロスマニを、むしろ打ちのめす結果になる。絵に対する情熱やクルジア国の理想の姿などを会合に出席した画家たちの前で述べた彼を、彼らは人生を安易に考えすぎていると批難し、軽蔑さえしたのだ。新聞には、そんな彼の言動をバカにし、風刺した記事がのり、ついには彼の親友たちまでが見放していくのだった。前より貧しく、孤独になったピロスマニは、それでもなお、自分の理想を抱き、変わらぬ信念で絵を描き続けていった。すべてから孤立した小さな小屋での、ただ一人の貧しい生活は、しかし、永遠に抱き続けた理想をまげることなく彼が死ぬまで続けられたのだった。