ミュンヘン郊外の田舎町、ローゼンハイムから観光旅行にやってきたミュンヒグシュテットナー夫妻は、ディズニーランドからラスヴェガスの道中で夫婦喧嘩になってしまい、夫(ハンス・シュタードルバウアー)と別れ車を降りたジャスミン(マリアンネ・ゼーゲブレヒト)は、重いトランクを提げてあてどもなく歩き出した。やっとの思いでたどりついた、さびれたモーテル兼カフェ兼ガソリンスタンド“バグダッド・カフェ”で部屋を借りようとするジャスミンに、女主人のブレンダ(CCH・パウンダー)は不機嫌な迷惑そうな表情を隠そうとしない。いつも昼寝ばかりしているバーテン(ジョージ・アキラー)、自分の赤ん坊の面倒も見ずに一日中ピアノばかり弾いているサルJr(ダロン・フラッグ)、ハネッカエリ娘のフィリス(モニカ・カローン)達に始終腹を立てているブレンダは、たった今ノロマな亭主サル(G・スモーキー・キャンベル)を追い出したばかりだったのだ。トラック野郎相手の女刺青師デビー(クリスティーネ・カウフマン)、ハリウッドから流れてきたカウボーイ気取りの画家ルーディ(ジャック・パランス)、そしてヒッチハイカーのエリック(アラン・S・クレイグ)と、客も奇妙なのばかり……。やがてブレンダは、この薄気味悪い大女ジャスミンを追いだそうと躍起になるが、彼女の怒りが爆発するのは、ブレンダの留守中にジャスミンがモーテルの大掃除をしてしまったこと。しかしその頃から、サルJrとフェリスがいつしか失くしていた包容力を求め、ジャスミンの部屋をしばしば訪ね、また彼女の柔和な人柄と笑顔に魅かれたルーディは、絵のモデルに、とジャスミンを口説き始める。そしてブレンダは、ある朝カフェの客相手に手品を披露し始めたジャスミン目当てに客が“バグダッド・カフェ”にやって来るのに、次第に表情をやわらげてゆくのだった。しかし、すっかりカフェの一員となったジャスミンに、保安官(アペサナクワット)は、ビザの期限切れと、労働許可証の不所持を理由に、西ドイツへの帰国を命じるのだった。数カ月後、ジャスミンは“バグダッド・カフェ”に戻ってきた。歓喜で彼女を温かく迎えるブレンダたち。そしてそんなジャスミンに、ルーディはプロポーズする。そして勿論、ジャスミンはそれを受諾するのだった。