シベリア、ボロチャンカのユダヤ人収容所。脱走不可能といわれたこの収容所から、ユダヤ人科学者アーロン・J・キャプランが脱走した。数日後、ロンドンでアメリカの情報機関“グループ3”のチーフ、ブレーク(D・アンドリュース)と英国秘密情報局Kの主任ルーミス(D・プレザンス)が密会していた。ブレークはルーミスに、キャプラン逮捕を依頼したが、ルーミスはその条件として、ブレークが盗んだ中国の最高軍事会議の記録書を要求し、会談は決裂した。K局に戻ったルーミスはジョン・クレイグ(S・ベイカー)を呼び寄せた。クレイグはK局のトップ・スパイだったが、KGB(ロシア秘密警察)の電気拷問を受けて以来、不能となりトップの座を追われた。作戦の囮としてロイス(D・ネスビッド)とジョアンナ(S・ロイド)がつくことになった。クレイグはさっそくアメリカへ飛び、キャプランの兄マーカスに会ったが、教えてもらえなかったため、彼の秘書ミリアム・ローマン(G・チャップリン)を人質に、マーカスに迫った。“トルコのクツクのそばらしい。それしか判らない”。クレイグはミリアムを人質として連行しトルコに向かった。アンカラに着いて一泊し、翌日はクツクに行く予定だった。ルーミスは自分を囮にしたに違いないことはもう判っていた。それだけに組織の力を借りずにキャプランを手中におさめなければならなかった。その夜、クレイグはミリアムと寝た。一年ぶりの女だった。彼女は優しく、不能だった彼は甦った。クツクのホテルで彼らはロイスとベンソンの二人組に襲われた。二人はマーカスから情報を得られないので、クレイグの後を追ってきたのだ。ロイスはミリアムを拷問し、キャプランの居所をいえと迫った。“クツクから六キロ程離れた野原と湖のほとり”。それを聞くとロイスとベンソンは表へ飛びだした。必死で縄をほどき、後を追って行こうとするクレイグを、ミリアムがとめた。彼女の自白はでたらめだったのだ。クレイグは目的地に向かった。羊飼いの小屋があり、一人の男がいた。アーロン・J・キャプランだった。男は観念したようにうなずいた。クレイグが彼をうながしたとき、赤い車が野原の向こうからやってきた。ロイスとベンソンに違いない。クレイグはタイヤを撃ち抜いた。車は一回転して中から二人が出てきたところを、クレイグはガソリン・タンクを狙ってもう一発撃った。クレイグはルーミスに連絡をとり、金を払えばキャプランを渡すと申し入れた。落ち合う場所は海を渡ったキプロスと決まった。キプロスの大きな別荘に隠れたクレイグたちをKGBが襲ったが、今のクレイグにとって取るにたらない敵だった。彼は今やK局の一員とは考えておらず、ルーミスとは対等に取引きをしようと思っていた。取引きは成立し、十万ポンドがクレイグの手許に入った。クレイグがフランスへ飛ぶことを知ったルーミスはパリに電話し、十万ポンド奪った犯人だから捕えてほしいと国際警察に頼み込んだ。だが、クレイグはパリ行きの飛行機には乗らなかった。今のクレイグにとって、ルーミスの小細工を見破ることなど、簡単なことだった。