十七世紀の中頃、ポーランドの辺境の寒村に一堂の尼僧院があった。ここの院長尼は美しい教母で、周囲の人々の信頼を集めていた。ところが、天使たちの教母と敬われるヨアンナ尼(ルチーナ・ヴィニエツカ)に悪魔がのりうつり、十数人の修道尼たちもヨアンナにならって悪魔のダンスを踊るようになったという。人々は、前の教区司祭ガルニエツ神父が魔法使いで、尼僧院の幾重もの壁をつき抜け夜な夜なヨアンナの寝室に侵入するためヨアンナに悪魔がのりうつったのだと噂した。ガルニエツ神父は、ついに尼僧院の前の砂丘で火刑に処せられた。が、ヨアンナの悪魔は退散する様子もなかった。そこで大司教は童貞僧のスリン神父(ミエチスワフ・ウォイト)を尼僧院につかわした。スリンは敬虔な祈りをすませたのち尼僧院へ乗り込んだ。広間に通されヨアンナ尼と会ったスリンは、二人で心をこめて神に祈れば悪魔は必ず離れるとヨアンナに説いた。その時、突然ヨアンナの形相が変わり、薄気味悪い笑いと共に悪魔の言葉をはき出した。そして悪魔の笑いを響かせながら壁に血の手型を残して部屋を飛び出した。彼女の悪魔を目のあたりに見たスリンは、ヨアンナと共に苦行を続けることにした。屋根裏部屋にこもって我が身をムチ打つ日が続いた。だが、二人が激しい疼痛を忍び合うことが、逆に親和感を増すものとなりいつの間にか悦楽を伴うようになった。自信を失ったスリンは、ユダヤ教司祭を訪れた。司祭はキリスト教に根本から反論した。スリンは却って悩みを深めたまま尼僧院にもどったが、そんなスリンにヨアンナは、神に仕えるよりは悪魔が与えるもろもろの悦びに身をまかせる方が生きがいがあると訴えた。スリンは思わずヨアンナに接吻した。が、たちまちスリンはのけぞり絶叫と共に階下へ転がり落ちた。口から口へヨアンナの体内から八つの悪魔がのり移ったのだ。宿屋の一室に逃避しとじこもったスリンは、悪魔の脅迫に苦しんだ。だが脅迫に従わないためにヨアンナに悪魔が戻るのを怖れたスリンは、命令通り斧をふるって二人の男を殺してしまった。血のしたたる斧を手にして、ヨアンナを聖者にするために、ヨアンナを愛するために人を殺したとつぶやくスリン神父。それを伝え聞きはらはらと涙をこぼすヨアンナをつつむように、尼僧院の鐘は静かに鳴りわたるのだった。