一九二〇年頃、インド・ベンガル地方にある小さな村での話。あれはてた家に住む一家は、主人のハリ(K・バナールジ)、妻のサルバジャヤ(K・バナールジ)、息子のオプ(S・バナールジ)、娘のドガ(U・D・グプタ)の四人暮し。ハリは給料の低い無力な官史で、僧侶兼学者としての教育をうけながら、詩や創作劇を書くことを夢みていた。彼の無力のため、今や代々受けついできた立派な果樹園も、借金のかたにとられてしまっていた。妻のサルバジャヤは、こんな夫によく仕え貧しさに耐え、自分たちの子に一日に二度の食事と、一年に二枚のサリーがあったらと望んでいるがその願いも、みじめな現実のために破られてしまった。そんな一家に、ハリの親戚である老婆がころがりこみ、生活はますます苦しくなるばかりだった。老婆を好きだったドガは、食べるだけが楽しみの老婆のために、果樹園から果物を盗んでは与えていた。祭りが近づいたある日、ハリが三ヵ月分のたまっていた給料をもらって帰ってきた。苦しかった一家にもやっと笑顔が生じた。親子は何日ぶりかで幸せをあじわった。しかし年老いた老婆は、それから間もなく、枯木が倒れるように死んでいった。オプとドガが遠くまで汽車を見に行った日だ。ハリはまとまった金が入るからと、妻がとめるのもきかずに、成人式をとり行うために旅立っていった。しかし目的地へ着いたら成人式は中止だったので、家の修理に必要な金をかせいでから帰る--という便りがあったきり五ヵ月がたってしまった。サルバジャヤは、その五ヵ月の間、じっとハリの帰りを待っていなければならなかった。飢えということは哀しいことだった。サルバジャヤはそんなことを思いながら、お金になりそうな物を売っては飢えをしのぐのだった。だが、もう売る物も売りつくし、サルバジャヤは息もたえだえだった。その上、雨にあたったのが原因でドガは死んでしまった。そんなある日、ハリは新しいサリーを買って帰ってきた。しかしすべては後の祭だった。ハリは新しい土地で人生を出直そうと決心し、親子は夜明けの道を進んでいった。