イヴォンヌは息子のミシェルが二十二歳になるというのに、まだ赤ん坊であるかのように愛している。ところがマドレーヌという美しい娘に会ったミシェルは、家族的団結から離脱する。この事を彼は母に告白すると、息子自慢のイヴォンヌは世界が引っくり返ったように大騒ぎする。彼女は承知せず、見たことのないマドレーヌを、どろ棒だとわめき立てる。ミシェルの叔母レオは、甥くらいの年ごろの青年が恋をするのは当然で、父に相談するがいいという。ミシェルが父のジョルジュに打明けると、図らずもやっ介な事になる。皮肉な運命のめぐり合わせで、マドレーヌこそはジョルジュが秘かに世話をしている囲い女なのである。レオは口実をこしらえてミシェルに座をはずさせ、こうなったからにはジョルジュが手をひくのが成行きだろうと、義兄にあきらめさせようとする。家族の同意を得るためには、マドレーヌに会うのが早いと思ったミシェルは、家族全部でマドレーヌを訪れることを提議する。彼女の美しさと若さと淑やかさが、皆を征服するに違いないからだ。落胆しているジョルジュに、この結婚をブチこわせばいい、マドレーヌを脅迫すればいいとレオはけしかける。彼女を断念し得ぬジョルジュは、ほかに若い恋人があると言えとマドレーヌに命じる。ミシェルがジョルジュの息子だという事に、気も転倒したマドレーヌは、涙ながらに言われた通りに訪れた家族たちに言う。喜んだのはイヴォンヌだけでミシェルもマドレーヌも悲しむ。それを見るとレオは可哀想になって、私が引受けるから私を訪ねて来いとマドレーヌに言う。そしてジョルジュに向って中年男の卑しい欲望ゆえに、若い二人の幸福をぎせいにしては悪かろうというとエゴイストではあるが性質は善良なジョルジュは、自分があきらめて身を引くと約束する。妻にも納得させることが出来るだろう、という次第で、マドレーヌは秘かにレオを訪ねて来る。ジョルジュは悲嘆にくれている息子に、マドレーヌは不つり合な縁だと考えて、誤破算にするために前後の考えもなく、自分を責めるような事を口走ったのだと言い聞かせる。ミシェルはそれを半信半疑である。息子が嘆いてフランスを去ってしまうというので、半分気が狂って来ていたイヴォンヌは、マドレーヌを見るとすっかり信じて有頂天に喜ぶミシェルの有様に、がっかりして皆をレオの部屋に残して、自分のベッドに倒れる。ミシェルはマドレーヌに取られてしまった、今度はジョルジュをレオに奪われるに違いない--イヴォンヌはもう想を続けて、レオはジョルジュと二人企らんで彼女を殺すだろうと思い込む。イヴォンヌは自ら毒を飲む。イヴォンヌに喜んでもらおうと、マドレーヌが来て見て虫の息のイヴォンヌを発見する。一同がろう敗して医者も呼ばないうちに、イヴォンヌは絶命する。