「モスクワの音楽娘」についで公開されるソ連映画の第二弾であり、戦後日本における最初の色彩映画である。原作者であり同時に脚色をI・ケレルと協同で担当したP・パジョフは現在ウラル地方の民俗作家としてまた新しい童話作家として著名でありスターリング賞けい冠作家の称号をもっている。その代表作の一つ「石の花」はロシア人独特のねばり強さと純真な人間愛をテーマとした作品で、映画化に当りシナリオの専門家I・ケレルがシナリオに協力した。監督アレクサンドル・プトゥシコはモスクワ撮影所におけるトリック映画、立体映画の権威者で、一九三四年に発表した長篇人形映画「新ガリヴァー」によって彼の名声は世界的になった。一九三七年にはプーシキン原作の夢幻劇「ルスランとリュドミーラ」を発表、続いて三八年にはじめて色彩漫画映画「漁師と魚物語」を完成した。さらに三九年には立体漫画映画「黄金の鍵」を製作、その後間もなく戦時製作に入り、一九四六年戦後最初の天然色大作として本篇を製作した。この映画によって、彼は一九四六年度芸術映画スターリン賞を得たが、またフランスのカンヌで開催された四六年度世界映画審査会においても最優秀作品に推される。撮影のフョードル・プロヴォロフは色彩映画の一流技術家でありソ連最初の色彩映画「うぐいす」(監督ニコライ・エック)を一九三六年に完成、またソ連の年中行事たるスポーツ祭をはじめて天然色で撮影(一九三八年)したのもこの人である。美術担当のミハイル・ボグダノフ及びゲンナジー・ミャスニコフはともに一流の舞台装置家として著名である。出演者のうち主人公ダニーラにふんするウラジミール・ドルージニコフと娘カーチャにふんするデレーヴシチコフはいずれも新人であるが、女王にふんするタマーラ・マカーロワは一五年前日本でも公開された「イワン」に出演しており、その後「コムソモーリスク」(三八年)、「先生」「青春の峰」(四〇年)等に出演、ゼヴェリヤンにふんするM・ヤンシン、老職人にふんするM・トロヤーノスキィはいずれもモスクワ劇壇の大幹部で、古くから映画にも出演している。