大手の病院で外科医長を務める速水修平は42歳。妻・房子は雑誌記者として働いており、38歳という年齢ながら美しさはますます円熟味を増していた。二人の間には17歳の娘・弘美がいる。修平は月に何度か人妻・岡部葉子との浮気を楽しんでいたが、弘美はふだん寮住まいで週末家に帰る程度、房子も仕事柄夜は遅く、いちおう円満な家庭生活を送っていた。ある夜、修平が帰宅すると電話が鳴り、受話器を取ると唐突に「もう帰ったんですか?」という男の声がした。不信な電話に房子を疑い始める修平。房子は年下のカメラマン・松永と取材を重ねるうちお互いに惹かれ、プライベートにも会うようになったのである。しかし、それは夫の浮気に対する腹いせなどというものではなく、ごく自然な感情だった。修平は試すつもりである晩、房子をディナーショウに誘った後、ラブホテルに連れ込んだ。二人は抱き合ったが、激しく乱れる房子に修平は驚きを感じた。お互いに相手の浮気に対して敏感になっていた頃、修平は葉子と札幌に出かけた。学会の後、旅を楽しむつもりだったのだ。房子のことも気になったので家に電話を入れたが、弘美が出て、急な取材で長崎へ発ったとのことだった。その頃、房子は松永と一緒に長崎にいた。彼女も夫のことが気になり、宿泊予定のホテルに電話をするがいない。札幌中のホテルに電話をし、翌朝房子はようやく修平の居場所をつきとめた。夕食を羽田で家族三人でとろうという房子の提案を修平は「遅くなるから」と断った。が、修平と葉子が羽田に着くと時間をずらしたにもかかわらず房子と弘美が待っていた。葉子は黙って立ち去り、弘美も気まずい両親の雰囲気に帰って行った。帰宅した修平と房子は初めてお互いの不満を爆発させた。翌朝、修平は房子と口も聞かずに出かけた。一人になると房子は夫のことが心配になったが、その夜、修平は同僚に連れられ泥酔状態で帰ってきた。羽田の件以来、修平と葉子の関係も薄れてきて、房子もまた松永と会うことを避けていた。が、しばらくして葉子から修平へ電話がきた。友人の診察依頼だったが、修平はホテルで会う約束をさせた。松永も房子を音楽会に誘った。その帰りに房子は松永に別れ話を持ち出すが聞き入れてもらえない。房子自身、家庭を守るべきか迷っており、松永の「つらい」という言葉に気持ちはぐらついた。ケーキを買って帰宅する修平。お互いの浮気に気づきながら言い争うことのなくなった二人。家族三人で、表面上円満な家庭生活を続けている。修平も房子もいまの生活を壊してまで、浮気の相手と一緒になるほどの情熱は持っていなかった。