安達郁子は22歳、大学卒業を控えてアルバイト先の札幌のタウン誌編集部を解雇され、正社員への道を断たれてしまった。小樽の実家に帰ると、さらに驚くべきことが待っていた。教師の父が元グループ・サウンズのメンバーだったと知らされ、しかもソロ歌手として、芸能界に復帰するという。そして、母までが「イルカの調教師になりたい」と言い出した。すっかり頭の混乱した郁子は自分でも何をしたらいいのか方向が決まらず、東京の友人・河野麻理を訪ねた。しかし、アパートには同棲相手の劇団リーダー・池田雅志しかおらず「麻理は憧れの“宝塚”を目指し家出した」という。麻理を追う郁子はフェリーの中でかつて同じタウン誌の編集にいた年輩の女性・暮林愛子と会った。彼女は編集長との恋に破れ、隠し子のいる京都へ行く途中だった。麻理は宝塚歌劇団の親衛隊をやっていた。郁子は麻理に、山之内淑恵という経理事務所を経営する中年の独身女性を紹介された。そして3人は小高い丘の上にある古い洋館を建て直し、そこに同居することになった。やりたいことが見つからない郁子はとりあえず宝塚ファン雑誌の編集部で働くことにした。一方、郁子の父・安達年男はデビュー曲「さよならの女たち」が好調で、神戸でコンサートを開くまでになる。そんな父娘を郁子の高校の同級生・石橋宏幸が見守っていた。彼は音楽業界の仕事についていた。やがて洋館には愛子と子供、雅志もやって来て賑やかになった。愛子の別れた夫・中山誠吾は年上の女の無理心中の道連れにされ、車ごと海へ沈んだが、なんとか脱出し、危ういところを助けられた。が、今度はやくざに追われるハメになった。車で逃げる愛子と誠吾を追ってくるやくざ2人組。愛子は素晴らしい運転さばきで洋館へと逃げ込んで来た。しかし、ここもいつかは見つかってしまうだろうと一計を案じ、麻理と雅志が2人に化けて身代わりに車で逃げることにした。やくざの目をそらして、愛子と誠吾は子供を連れて洋館を後にした。洋館に残された淑恵と郁子。そこへ郁子の父から電話が入った。「お母さんが妊娠した」という。淑恵も郁子も洋館を出るときがきた。以前から地上げ屋に目をつけられていたが、言いなりになるのは面白くない。そこで2人は「持ってけ、泥棒!」の貼り紙を残し、自分たちで柱にノコギリを入れた。淑恵と郁子が洋館を出る替わりに地上げ屋がやって来て、中に入り貼紙をはがすと洋館は自然に崩れた。病院では赤ちゃんが元気よく泣いていた。郁子の妹である。郁子は「君が20歳になるとき私は40歳を過ぎてるね。そのときどんな女性になっているのかしら」とつぶやくのだった。