関東北部の地方都市・日暮市の市長が愛人宅で腹上死。娘・房子の夫で大学助教授の牧原芳彦が後継として清川芳彦を名乗り、次期市長選に立候補することになった。初めは気が進まなかったのだが、ライバルの柳田県議が金権候補で、しかも市全体に腐敗が漂っていたので自らクリーンな民主主義市政を目指そうと立ち上がったのだ。本人は清潔な選挙戦を展開するつもりだったが、腐敗した土壌がそれを許さなかった。元県警の捜査課長で選挙の神様と呼ばれる裏参謀の蟻田からは芳彦のために5千万円の金がばらまかれ、事務所には選挙ゴロや金めあての取り巻き連中、柳田側のスパイなどが出入りしていた。ある日、芳彦の妻・房子と事務所の出納係・服部の不倫関係を暴く怪文書が出回った。二人は幼馴染みで6年前にラブホテルで密会していたのだ。芳彦は婦人層の人気を失い、焦って自ら労働組合の買収に走った。心身共に疲れはてた芳彦に致命的な打撃を与えたのは、娘・悦子の自殺未遂。惨めな父親の姿と両親の不和に絶望したのである。自分を取り戻した芳彦は投票日前日の個人演説会で今回の腐敗した選挙戦で家庭が崩壊したことを告げ、このような土壌をつくった金に弱い有権者らに猛烈な批判を浴びせるのだった。