東南アジアの南ネシア共和国にクーデターが起った。日本の巨大企業N物産は南ネシアと莫大な武器取引をしていた関係で、その損失を怖れて、ジャカール大統領の亡命の手引をした。ところが、N物産は裏で革命政府とも通じており、ジャカールを暗殺すれば、前政府との取引を復活させるという言責をとっていた。当然革命政府側も暗殺を計ろうとした。とにかく、先に殺した方が取引に有利なのである。N物産社長秘書の薫は国際的殺しのプロ・九条をやとった。大統領の東京滞在は三日間だ。暗殺を阻止するため、警視庁警部戸田が元オリンピック射撃選手の腕を買われて、密命をうけた。戸田は襲いくる革命政府のテロリストと対戦するうちに、敏しょうでずる賢しこい、まるで黒豹のような男、九条の存在を知った。一方、九条と薫も抜群の射撃の腕、機敏な動き、まさしくシェパードのような男戸田の存在を知った。だが九条は金髪女性ナンシーと情事を重ねる余裕さえみせていた。時は刻々と過ぎた。やがて、テロリスト、九条、戸田の三巴の激戦が始まったが、戸田の部下、平松は九条に殺され、戸田ははずみで、ナンシーを殺してしまった。戸田と九条の憎悪は、対決を前に、いよいよ高まった。そして、九条の必死の攻撃をかわして、大統領を乗せた専用機が、米軍基地を飛び立ったとき、二人の雌雄を決する時がきた。巨大な米軍の格納庫の中で戸田と九条の死闘がつづいた。右腕と左脚を射ち抜かれた戸田、胸を撃たれてなおも息づいている九条。静寂が二人を包んでいた。