三味線をしっかりと手に握った座頭市が銚子の港へ向かっていた。偶然の事故で、市の目の前で死んだ行きづりの老婆から彼女の娘に形見の三味線を届けるよう頼まれたのである。銚子の宿、女郎屋“扇屋”に娘、錦木がいた。市は錦木を身請けする金を稼ぎに賭場へ向かった。一人の母親の切ない願いをかなえてやるために。賭場の貸元、鍵屋万五郎は、漁師たちを無理矢理賭場へ誘い、金ばかりか船までもまきあげていた。万五郎の狙いは、港の実権を握ることである。その賭場へ市が現れ、五十両をなんなく稼いでしまった。怒った万五郎は、飯岡助五郎から“百両首の座頭市”の廻状が回っていることもあり、子分たちと用心棒神条常盤に市を狙わせた。五十両で錦木を身請けした市は、錦木に指一本ふれようとはしなかった。ところが錦木には、市の情が分らず、盲の市を気嫌いするのだった。一方、万五郎は銚子の港を着々と自分のものにしていった。実権を握った万五郎は市の命を狙うべく、綿木の馴染みの男、丑松を使い錦木を人質にとる。そして、錦木を庇う市の利腕の骨を潰してしまった。その上、用の無くなった丑松を殺し、錦木をふたたび女郎屋に戻す。とうの昔に人なみの夢や幸福など捨てさり、昨日、今日と別の男に抱かれることに仇花を咲かせる女になってしまった錦木。だが、何故か市の後姿に女心がゆれ、涙がにじむのだった。利腕のきかなくなった市にとどめをさそうとした万五郎一味。絶体絶命の市。しかし市は、潰された腕を、抜き放った仕込み杖に固く縛りつけ最後の反撃にうつり、危機を脱する。そして、おじ気づいた万五郎一味を相手に怒りの仕込み杖を振り回すのだった。