宝永六年。江戸城大奥にて一人の中臈おしんが六代目将軍徳川家宣に手打ちとなり、その部屋は“明かずの間”となり、以来、誰一人入らなかった。四年後、おしんの妹お八重と、お美代が大奥への御奉公が命ぜられる。お八重には姉の死因を探る目的があった。当時、大奥では、お清の方とお蝶の方の二つの勢力が張りあっていた。そして二人は、家宣の側女を刺青競べにより決定しようとした。お蝶の方は、江戸随一の刺青師彫辰に依頼し、お美代に彫ると発表。一方、お蝶の方は、新三という彫辰の弟子に依頼し、お八重に彫ることにする。新三とお八重は刺青を彫り進むにつれ互いに魅かれていった。そして新三が彫った刺青は、お八重の感情の昂揚する度に妖しく変化する隠し彫りで見事お美代に勝つのだった。以来、家宣の寵愛を受けたお八重は念願の“明かずの間”の秘密を見る。そこには、おしんの遺牌、遺髪などが安置されており、部屋中におしんの怨念が満ちているかのようだった。そして床の上には、刺青競べで破れたお蝶の方と、お蝶の一派だった医師玄斉が逃げて来たのであろうか、呪い殺されたかのような死骸が横たわっていた。