地方駅のホーム。高校生の玲子が二人分の荷物を持って放心したように歩いていた。東京に戻った玲子は同級生の下村に連絡をとった。そして下村に玲子は草子が死んだことを告げた。あんなに親しかった二人の間に何が起ったのか、そして草子の死因は……。下村と玲子は現像した8ミリフィルムを映写することにした。夏休み、玲子と草子は目的のない旅に出た。8ミリは二人の少女の東京駅の出発から始まった。見送る下村の顔、走る列車、流れる景色、みどりの林、ボートで遊ぶ二人、そして浜辺で裸で泳ぐ二人の姿。玲子を好きな下村にはそのカットは少々ショックだった。旅が続く。海岸近くの丘で奇妙な風船をあげようとしている青年と知り合い、風船をあげるのを手伝う。自衛隊に失望し、隊から風船の機械を持ち出して、そのまま逃げているという、沖と名乗った青年は自分のかくれ家である船に二人を案内した。“いつまでも空の上にいたい、汚れた地上は大嫌いだ”と語る沖。その沖に玲子と草子はいつしか惹かれていった。やがて、草子は、はっきりと玲子を邪魔し始めた。沖も草子の魅力にとらえられ二人は一夜を過ごした。だが翌朝、草子は不気嫌だった。夢と想われた沖に失望してしまったのだ。激しく夢を求め変身を望む、彼女の性質が自分自身を悲しませているのだった。突然、草子は変装ごっこを始めた。その、おかしく、寂しい変身。突如草子は、変装したまま崖へ走り出した。その草子を追いかける玲子の8ミリが烈しく乱れ、地面に激突していた……。夏休みが終った。ある日、学校近くの喫茶店で、刑事に沖と間違えられた下村は、沖のことを玲子に追求し始めた。玲子もまた、あのとき、草子と自分の魂を狂わせたものは何であるかを探し求めていた。二人の努力は死んだ草子のフィルムを完成させることにつながるかもしれない。