銀座を走る一台の護送車。東京地検の一室。浅井の二週間にわたる東京少年鑑別所(通称:ネリカン)生活が始まった。思いはシャバに帰る。浅草は生きやすかった。安い飯や遊び、からかう女にもこと欠かない。浅井は親分や兄貴分の下につけない性分だった。彼がここに来たのは、不良仲間と三人で真珠店を襲い、二十万円の真珠のネックレスを奪ったからだ。強盗を働いたのは、上品なウインドーとお高い店員が虫がすかなかったからだ。その後浅井は、海に近い岬の一角にある明治少年院に収容された。彼はクリーニング科に編入されたが、ここにはやくざ的組織ができており、空手をやる班長江上と下に中幹部がいる。兄貴分にへつらえない浅井はことごとに目をつけられ、ついにみせしめのリンチにあう。復讐を誓った浅井は、班長等が反則のパンを自分たちだけで噛っているのを種に、喧嘩を売って出た。クリーニング科の喧嘩騒ぎは問題視され、教官会議で浅井は木工科に編入となった。そこはクリーニング科とは違い、班長の藤川、副リーダー格の木下はともに不良の苦労が身にしみて温かささえあった。そうこうするうちに、シャバ時代に恐喝行為を繰り返していた時の仲間の出張が少年院にやってきた。あの頃は毎日善良なサラリーマンやアルバイト学生を襲っていた。出張は被害者の様子を詳しく回想する。後味の悪さのためだろう。被害者たちの許しを請う声は浅井の耳にこびりついた。やがて退院の日がきた。一年働いた金三百二十円を受取って、浅井は門を出るのだった。