ドブ臭い空気が充満する貧民窟で育った三人の黒木兄弟。長兄の市郎は、年老いた母の金を奪うと、新興ヤクザ岩崎組に入って幹部になった。次兄の次郎も、母を裏切ると、あらゆる悪の道に手を出しながら、金持杏子のヒモとして、一匹狼となっていた。そして末弟の三郎は母の最期をみとると、チンピラの群れに加わった。いつまでもうだつのあがらない生活に倦きた次郎は、国外脱出に自分の新しい生活を求めた。その資金は、岩崎組の麻薬取引現場を襲って、四千万の金品を奪うのだ。相棒の水原、そして弟の三郎と仲間たち。人数は揃った。兄に凄まじい憎悪を抱く三郎も、一人アタマ五万円の分け前に、半信半疑ながら、賛成したのだ。計画は成功した。市郎も、水原も、胸算用しては悦に入っていた。だが、意外なことがおきた。四千万円の運搬にあたっていた三郎が、この金を隠してしまったのだ。幼い弟達を見捨て、病弱な母を置いて、飛び出した市郎に対する面あてが、三郎の動機であった。この不測の出来事に慌てた次郎は、三郎や仲間を拷問したが、三郎の口は開かなかった。一方市郎は自分の弟達の手によって、懸命になって叩きあげた地位が、失われようとする焦りと、岩崎の疑惑の眼を感じて、四千万を必死に追求した。遂に岩崎組の手によって、次郎達の居場所はつきとめられた。かつて幼い兄弟の遊び場であった倉庫の中だ。頑として口を割らない三郎を中心に、疲れはてた仲間達。市郎の誘いの言葉に、水原は、三郎に拳銃を向けた。だが、次郎は、三郎を擁護して、一瞬早く水原を射った。この時、次郎と三郎は、二人が血の繋がった兄弟である事を強く感じ、遠くにいる市郎に同じ怒りを抱いた。全てを拒絶した三郎らを、岩崎組の拳銃が一斉に射撃した。遂に金のありかもわからず、ひきあげる市郎の姿には、敗残者の寂しさがあった。