織物の町尾西市に、松井組長の命令を受けて、チンピラ山口昌次が弟分サブを連れてやって来た。女工を引き抜いて売りこもうというわけだ。近くの汁粉屋に腰を落着けた昌次は、よく来る女工サツキに早くも目をつけていた。しかしそれは、仕事を離れた好意であった。だが昌次の素姓を知ったサツキは、やくざは嫌い!と昌次へ怒りをぶちまけた。昌次の素姓は、サツキの親友で、かつて昌次と同じチンピラ仲間であった太一によって知らされたのだった。怒った昌次は太一を神社に呼んで、殴ったが、これが逆に二人の間を親密にした。翌日、太一に誘われて、織物工場を見た昌次は、女工たちの美しい表情に、身のしまるのを感じた。だが昌次と一緒にいる太一を見たサツキは、太一へ雑言をあびせて、去って言った。昌次の心は重かった。再び泥沼の生活が昌次を待っていた。話を聞いたサツキ、太一の努力で、心のほぐれた昌次は、ハイキングに参加したが、楽しいコーラスの中で昌次は孤独であった。途中、サブと抜けだして帰った昌次を、太一は激しく責めた。それから一週間ののち、サツキの父が突然尾西にやって来た。仕事の都合で案内出来ないサツキに代って、昌次は観光案内を買って出た。一方サブが盲腸で入院した。その頃、サツキは父の胃ガンを治療するため、入院費の捻出に、キャバレー勤めを覚悟していた。これを聞いた昌次は、皆に呼びかけて、サツキに入院費を手渡した。昌次の親切にサツキの心は次第に柔らいだ。そして昌次もこれを機会にやくざの世界から足を洗う決心をしたが、松井組長から激しくつめ指を迫られ、遂に小指をつめ、尾西市をあとにした。見送るサツキの目に涙が光っていた。