タミ子は先夫の息子タケシと共に、アンデスにいる太郎のところへ写真だけの見合いで嫁いできた。そして、近くにインカの古城がそびえ、中世風の石をつみ上げた段々畠の遺跡のある小さなインディオ集落で、タミ子の新しい生活が始まった。太郎の父は、不毛の地を開拓して南米の農業に貢献した日本人の一人だった。だが太郎は名門の子孫キスキスと共に、父とは別な方法を考えていた。アンデスの山奥に埋蔵されているはずのインカ帝国の財宝を発掘し、それで再びインディオの文明を栄えさせようというのだった。タミ子はそんなことよりも、もっと地道な方法をとった。そして貧しい土地のために多収穫をもたらす種を近くの日本人開拓者集落からもらってきて、せっせと働くのだった。その集落には佐々木という若い男がいて、タミ子には親切にしてくれた。ある日、太郎が財宝探しに出たまま長い間行方不明になった。タミ子はその間に太郎の子を生んだ。そして半年過ぎた頃、今では雑貨屋をやって、村では貴重な存在になったタミ子のところへ太郎が帰ってきた。財宝のある場所を見つけたのだった。やがて発掘隊が編成され、財宝は掘り出された。だが、太郎は二千年前の古い遺跡が崩れた時、その下敷になってしまった。タミ子はその悲しみの中で太郎の遺志を守り、インディオの繁栄の為に尽くそうと誓うのだった。タミ子は財宝をペルー国家に収め、多額の賞金を受け取った。その金でいろいろなことができるとタミ子の胸ははずんだ。良質の種を手に入れることや、待望の水をひくこと……。佐々木は、今やタミ子が、インディオの未来を拓く女に変貌していることに驚きの目を見張った。そしてアンデスの未来は明るく輝いていると思うのだった。