北海道の観光王佐々林豪一の息子一郎は、ある日、父と長姉の奈美恵が抱きあっているのを見て仰天した。実は奈美恵は、少女時代に豪一に拾われた娘で、豪一の女だったのだ。それを姉のみどりから知らされた一郎は、みどりも母トキも、妻妾同居を平然と受け入れているのに憤激し、それ以来すっかり変ってしまった。家で食事もしなくなった一郎は、毎日パンを買う店の久代の優しさに惹かれていった。久代は子供の和夫とつましく暮している女だった。一方、決活で成績のよかった一郎の変化に気づいた教師の杉浦は、家庭訪問して佐々林家の乱脈ぶりに気づき、一郎のこころの成長を気づかった。杉浦は久代に好意を持ち、一郎が久代の家を訪れるとよく談笑していた。一郎は杉浦にライバルめいた意識を持ち、久代の肌着を杉浦のロッカーに入れておくという悪戯をやったが、軽くいなされてしまった。一郎はみどりに、奈美恵を父から奪うと宣言したが、それから間もなく、挑発する奈美恵を抱いた。そして、彼女に二度と父と寝ないと約束させたのだ。しかし、豪一と奈美恵の部屋は仕掛けドアでつながっていた。その事実を知った一郎が詰問すると、奈美恵は久代もまた豪一の女だという。久代に詰め寄る一郎は、久代が豪一の秘書だった頃暴行を受け、和夫を生んだことを知った。豪一の獣のような数々の振舞いに、一郎はナイフを手にして父に迫った。だが、もちろん刺せなかった。その夜、一郎は父の名を汚すため、学校に放火した。宿直の杉浦は、現場に落ちていた帽子から、犯人が一郎だと知ったが、責任をとって辞職した。豪一も一郎の仕業と察してあくまで否認するよう、厳命した。だが、みどりは一郎に自白するように言い、虚飾にみちた佐々林家から出ていった。一郎は、当夜杉浦の許にいて火傷した和夫を見て、さすがに良心の呵責に駆られた。そして、豪一の面前で警察へ自白の電話をするのだった。