街がまだ眠っている東京の休日。一人の男が、ビルの屋上から眼下にさしかかった特急ひかり号の一等車乗客を狙い撃った。狙撃者、松下徹三十歳。彼の経歴は大学の射撃部に在籍していたことしか解らない。そして今も射撃の訓練に明け暮れ、銃が身体の一部になっているような男だった。ある日、松下は、射撃場でファッションモデルの小高章子と知合った。彼女の趣味は蝶の蒐集。連日仕事とパーティの間を駈け廻っている章子は、トリパネ蝶の生息するニューギニアの自然に、憧れていた。松下にとっては、南国の太陽や蝶を追い求める章子が、章子にとっては、松下の冷徹なまでの個性が、おのおのの心に焼きついた。その夜二人は、章子のマンションで抱き合ったが、肉体的には結ばれなかった。松下に次の仕事が舞込んだ。依頼主は、商事会社の社長花田だった。彼は伊豆に密輸されるという金塊の横取りをする計画を持っていた。松下はその仕事を引受け、米軍基地の近ぐで銃砲店を営む学生時代の親友深沢を訪れた。深沢は警察の鑑識をあざむくために、米軍のベトナム帰休兵が横流ししたソ連製を松下に提供した。松下たちの襲撃は成功した。その夜、章子の許へ走った松下は歓喜と陶酔を味わった。だが、楽しい日々は長つづきしなかった。二人の間に倦怠がしのび寄り、章子はショウの仕事で富士高原へ出掛けて行った。一方、花田は莫大な金塊の売却を出来ずあせっていた。金ブローカーが密輸団の組織に動かされてか、軒なみに花田の金を敬遠したのだ。その上、花田と松下は、殺し屋片倉に狙われる身となった。その頃、松下は章子を訪れ、高原のスピードウェイで愛車2000GTを走らせていた。松下が飛来したヘリコプターから狙撃されたのは、そんな折だった。スタンドからこの有様を見ていた章子は、はじめて松下が殺し屋であることを知ったのだった。松下は片倉との対決を決意し、ゴルフ場で猛犬に襲いかからせ抜射ちで殺す片倉の手さばきを、フィルムにおさめて研究した。だが、その間に片倉は、花田と彼の手下を皆殺しにした上章子を人質にしていた。片倉の呼びだしに応じた松下は、目の前で章子を射たれた。二人は昇る太陽の中で対決した。松下は最高の人間標的を狙い撃ち倒し、生きる歓びを感ずるのだった。