鈴木太郎は、平凡なサラリーマン。親子三人の団地暮しで、無気力な毎日を送っていた。が、ある日、太郎に思いもかけぬ事件がもち上った。見知らぬ男が鈴木太郎と名のり、会社でも家庭でも、太郎の地位を奪ってしまったのだ。自分が誰だかわからなくなってしまった太郎は、絶望のあまり鉄道自殺をはかった。が、そこで太郎は同じように、人生に絶望した若い娘、百合子と知り合い、自分自身を知るために、二人で放浪の旅に出た。自分を失った太郎は、行く先々で気狂い、社長などに仕立てられ、次々と変身を重ねていった。そんな太郎にとって、優しい百合子だけが、慰めだった。様々な変身の末、太郎はついに、牛になってしまった。けれど、百合子は、やっと二人だけの幸福な世界が築けると、太郎に話しかけるのだった。