長崎の町は、出島の暗黒街に君臨する怪人物によって支配され、長崎奉行所もこの一派の配下に置かれていた。与力・守谷瀬左衛門はこの権力に反抗、ひそかに江戸へ七人の使者を送って長崎の実情を知らせようとした。しかし六人の使者は斬られ、後の一人の行方も分らなくなった。ようやく幕府も動き始めた。早乙女主水之介は東海道を下った。お供は、主水之介の懐を狙うスリのおりんにその乾分仙太。後を追うのは、幕府大目付望月に主水之介の用人可内である。長崎入りした夜、主水之介は刺客の一団に追われる守谷瀬左衛門の一子・小四郎を救った。が、この時すでに瀬左衛門は殺されていた。主水之介は、藤乃という女中から「出島の紅竜館、伴夢斎」という謎の言葉を囁かれた。主水之介は出島におもむき、紅竜館で伴夢斎と対面した。この席で、危く毒酒を飲まされそうになったが、お酌に出た芳蘭という女の機転で難を逃れた。この芳蘭も、伴夢斎も、唐人の格好をしていたが、日本人であることを主水之介はすでに見抜いていた。主水之介は紅竜館の地下室に潜入した。麻薬にむしばまれた男女がもだえ苦しんでいた。生地獄のような光景だった。倉庫には島津・鍋島・細川家の荷札のついた麻薬の包みが積まれていた。また伴夢斎が密室の中で武将の像に合掌する姿を見た。彼は徳川に亡ぼされた宇喜多秀家の子孫で、密貿易の麻薬を九州の各藩に売りつけ、徳川の治世を混乱させようと狙っていたのである。密貿易最後の船、竜神丸が出島に到着し、麻薬買入れの九州各藩の使者が出島に集った。主水之介はこの機を逃さなかった。小四郎、おりん、仙太らの退屈男一家を総動員、伴夢斎一味を倒した。