仏教大学の学生清水は悪魔的な雰囲気をもった学友田村のため、悩まされていた。彼には、恩師矢島教授の娘である幸子という婚約者がいた。ある日、幸子の許を訪れ楽しい時を過ごしていたが、田村が来、不快な気持ちにさせられた。田村と自宅に帰る途中、酔漢を轢殺してしまった。清水は良心の呵責と、つきまとう田村の存在に苦悩した。幸子と自首しようと車を走らせる途中、田村の幻影に襲われ、安全地帯にのり上げた。幸子は死んだ。幸子の母芙美は、ショックのため気が狂ってしまった。清水は、酒で苦痛を忘れようとした。田舎の父親から母が重態だから帰るようにという電報が来た。清水の父親は、田舎で天上園という養老施設を経営していた。この天上園には、それぞれ過去に罪を背負った人たちが集っていた。田村が、また清水の後を追ってやって来た。矢島教授も、芙美と講演旅行の帰途立ち寄った。洋子の呼び出しで、清水は指定の場所である崖に行った。彼女は轢死させた酔漢の女だった。拳銃を持って迫る洋子を、あやまって崖下に突き落した。殺意なき殺人をまた犯してしまった。数日後、天上園の十周年記念が催された。宴席に出された、腐った魚のため関係者は全員中毒症状を起こした。死にいたる直前、清水はおそるべき死後の世界“地獄”を夢想した。赤い炎と青い炎の中に、八大地獄の醜怪無残な姿が現われた。天上園の亡者たちの間を清水の姿を求めてさまよい歩いた--。