天正元年、織田信長の大軍に包囲されて、浅井長政の小谷城が陥ちたとき、その家臣で風雲の志をもった佐々木疾風之介、立花十郎太、鏡弥平次の三人の武士には、異った運命が待っていた。十郎太は疾風之介の恋人加乃を托されて信濃におち、二君に仕えずの気持から討死を覚悟で敵陣へ斬り込んだ疾風之介も弥平次も離れ離れなってしまった。疾風は深傷を負って倒れているのを野武士の藤十の娘おりょうに助けられた。おりょうは疾風に想いを寄せ、その小屋へ忍んで行った。これを知って斬りかかった藤十を疾風は心ならずも刺して逃げた。弥平次も生き永らえて海賊になっていたが、ある日子分の連れて来たおりょうを救った。一方十郎太は、加乃と共に研師惣治の家に厄介になっていたが、次第に加乃への思慕と共に功名心をつのらせ、かつての敵方織田家へ仕えた。天正三年、丹波の八上城を攻める織田勢のなかに十郎太の姿があり、八上城の城には疾風之介と豪の者として名の聞こえた三好兵部の姿が見られた。おりょうは疾風之介のあとを追ってこの城へ向かって馬を走らせ、加乃もやはり彼を慕ってさまよううちに弥平太に救われ、おりょうのあとを追う弥平太と一緒に八上の城へ向かった。十郎太はおりょうを捕らえてこれを囮に疾風を城へおびき出したが、かえって流れ弾丸に当たって死んだ。疾風が城へ戻ろうとしたとき、おりょうはその体にしがみついた。そしてこれを見ていた三好兵部は、疾風の健在を祈って縄梯子をひきあげてしまった。が、加乃と疾風の結ばれる運命を知ったおりょうは断崖から身を投じ果て、おりょうを失った弥平次は呆然として琵琶湖へ帰って行った。疾風之介は愛のため栄達の野望をすて、加乃と二人で旅を行くのであった。