香月美和子は東洋評論社の入社試験に見事パスした。彼女は姉信子夫婦の家に同居していた。主人の高畠氏は実直な紳士で、信子は何の不自由もなかったが、刺戟のない日常生活に退屈して子供の学校のPTAの役員になって活躍するようになった。信子はここで同じ役員の石山春雄と親しくなった。石山はキザだが、女には非常に親切な男で、「山猫」というバアのマダム白川朝子のパトロンだった。信子の美しさにひかれた石山は色々な手段を使って彼女の心をとらえようとしていたが、世間知らずの彼女は誘惑の甘さにぐんぐんひかれて行きそうだった。一方美和子は社の野崎という青年と好意を持ち合ったが、編集長の野呂の家庭に出入りし、妻を失った彼の淋しさを見たり彼の老婆や子供たちに慕われると次第に彼を自分の結婚相手に考えるようになった。しかし、美和子の告白をきいた野呂は、若い彼女は若い相手を探して、共に苦労をして家庭を築いて行くべきだとさとした。信子もあやうく石山とあやまちを犯しそうになるが、彼女の人妻としての正しい本能がそれを自制させ、夫にすべてを告白して事なきを得た。白川朝子も胸を病み、石山と別れて美和子の叔父木村健吉の山の牧場で働くようになった。ある日、この牧場へ、木村の案内で高畠夫婦、美和子、野崎が訪ねた。花ざかりの丘にねころんだ美和子と野崎の二人の間に楽しい未来の生活設計が語られていた。