雷社長の聞えも高い日本一乳菓の小原重三郎も持病にはかてず、遂に社長の椅子を孫娘のマドカに一任する。マドカは十六歳の歌がすきな少女、歌劇スターを夢みるせいか、秘書の由美子が心配するほど仕事に乗気ではない。彼女は、ふとしたことからK劇場の舞台監督秋山と友達になり、彼が住む浅草裏お稲荷横丁の住人たち--広告デザインの研究青年並木やその恋人菊子、剽軽な三八とも知りあう。三人の師匠、幇間の桜川一八はマドカが娘ひとみの少女時代とそっくりなのにびっくりする。それもその筈、マドカはひとみが重三郎の息子と駈落ちして生んだ実の孫なのだった。浅草界隈になじむうち、会社製品のお菓子がパチンコ屋に横流しされていることを発見したマドカは、今度こそ本腰をいれて会社経営の刷新にのりだした。彼女の理想は、良いお菓子をできるだけ沢山の子供たちにわたすことである。そのために悪徳幹部安田専務や三戸宣伝課長、由美子の父親の貝谷経理部長などへの監視を怠らなかった。が、彼らもさるもの、マドカが新宣伝部員として入社させた敬吾の仕事を、計画ずくでまんまと失敗させ、マドカ社長の面目丸潰れとなった。彼らはさらに日本一乳菓に大きな損害をあたえ、競争相手のパシフィック製菓に乗取らせようとしたが、偶然、謀議の酒席に侍った一八の口からこの奸計がもれ、さらに由美子に熱心に反省をもとめられた貝谷が、一派のすべての旧悪を告白したこともあって、獅子身中の虫はいちはやく摘まみだされた。一八が祖父であることを知ったマドカの心はいやが上に明かるく、やがてマドカの夢も実現に近かった。--「日本一アワー」がテレビ中継されている劇場では、手に手に日本一キャラメルをもった子供たちを前に、マドカの歌が続けられている。