昭和19年10月、戦況の逼迫する中、東京の小学校五年生だった風間進二は、富山に縁故疎開することになった。富山で最初に進二に近づいてきたのは地元のリーダー武で、田舎での生活に不安を抱き始めていた進二は、そんな武に親しみを感じるのだった。ところが武は学校でよそ者扱いされる進二を無視し、自らも進二に対して高圧的な態度で接してきた。進二は武の矛盾する態度が理解できないまま、皆の前では召使いのような扱いに甘んずるのだった。年が明けたころ、進二は東京からの荷物を受取りに行った隣町で悪童どもにからまれる。だがそれを救ったのは武だった。追手から逃れ、荒れた建物に潜んでいたとき、武はふっと思い出したように進二を近くの写真館に誘い二人で写貴をとってもらうのだった。春になり、病欠していたクラスの副級長須藤が復学してきた。武は須藤の巧みな策によって権力を失い孤立してしまう。武はかつての取り巻きたちにまで屈辱的な仕打ちを受けたが、毅然とした態度を守り続けるのだった。進二は今こそ真の友達として対等なつきあいが出来ると思って武に近づくが武は頑なに進二を拒んだ。やがて終戦となり、進二が東京に帰る日が来た。叔父や叔母、級友たちが見送りに来てくれたが、その中に武の姿はなかった。汽車が走り出しても進二は窓の外を見つめ続けていた。もはやあきらめかけていた時、少し離れた田んぼの道を必死に手をふりながら走る武の姿があった。進二も夢中で手をふりかえしたが武の姿はみるみる小さくなっていったのだった。