1989年、古都・京都。大学で日本文学を学ぶスイス出身の留学生「僕」は、町でガイジン扱いされることにうんざりしていた。ある日、彼は盲目の女性・京子に本を読んで聞かせる「対面朗読」なる仕事を引き受ける。対面朗読は『舞姫』から始まった。朗読の合間、ふたりは様々な会話を楽しみ、町へ出ていくことも多くなった。やがて、深く心を通わせるようになったふたりは恋に落ち、結ばれる。季節は巡り、卒論を仕上げた僕にフランスのテレビ局の通訳の仕事が舞い込んだ。その仕事の成功により、パリで就職先を紹介して貰った彼は日本を離れることを決める。一方、独立心の強い京子もまた就職を決めていた。春。それぞれの人生の転機を迎えたふたりは、桜の花びらが舞う夜の円山公園で別れた。白い杖を手にひとりで歩いていく京子の後ろ姿を、僕はいつまでも見送った……。