日本が南北に分断された、もう一つの戦後の世界。米軍統治下の青森の少年・藤沢ヒロキ(声:吉岡秀隆)と白川タクヤ(萩原聖人)は、同級生の沢渡サユリ(南里侑香)に憧れていた。彼らの瞳が見つめる先は彼女と、そしてもうひとつ。津軽海峡を走る国境線の向こう側、ユニオン占領下の北海道に建設された、謎の巨大な「塔」。視界にくっきりとそびえるその白い直線は、空に溶けるほどの高みまで遥か続いていた。いつか自分たちの力であの「塔」まで飛ぼうと、軍の廃品を利用し、山中の廃駅跡で小型飛行機を組み立てる二人。サユリも「塔」も、今はまだ手が届かないもの、しかしいつかは触れることができるはずのもの…二人の少年はそう信じていた。だが中学三年の夏、サユリは突然、東京に転校してしまう…。言いようのない虚脱感の中で、うやむやのうちに飛行機作りも投げ出され、ヒロキは東京の高校へ、タクヤは青森の高校へとそれぞれ別の道を歩き始める。三年後、タクヤは政府諮問の研究施設に身をおき、サユリへの憧れを打ち消すように「塔」の研究に没頭していた。一方で目標を喪失したまま、言葉にできない孤独感に苛まれながら、東京で一人暮らしを送るヒロキは、いつからか頻繁にサユリの夢を見るようになる。そこでのサユリはどこか冷たい場所にいて、自分と同じように、世界に一人きりとり残されている、そう感じていた。ヒロキの元に届けられた、中学時代の知り合いからの手紙。しばらくは開ける気がせず放っておいたその封を、偶然開いたヒロキは、サユリがあの夏からずっと原因不明の病により、眠り続けたままなのだということを知る。サユリを永遠の眠りから救おうと決意し、タクヤに協力を求めるヒロキ。そして眠り姫の目を覚まそうとする二人の騎士は、思いもかけず「塔」とこの世界の秘密に近づいていくことになる。折りしも「塔」を巡る世界情勢は悪化の一途を辿り、開戦の危機も目前に迫っていた。「サユリを救うのか、それとも世界を救うのか―」はたして彼らは、いつかの放課後に交わした約束の場所に立つことができるのか?