周囲からの人望が厚い元大学教授のユン・ソギョン(イ・ビョンホン)。そんなソギョンのもとに、元教え子のイ・スジンが訪れた。放送作家をしているスジンは、60歳を超えた今も独身のソギョンの初恋の相手を探す番組を企画していたのだ。突然の提案に戸惑いを見せながらも、ソギョンはスジンの熱意に心を動かす。そして、古びた一冊の本を手渡した。題名は『キョンアの花を折った男』。「この本を、ある女性に返すと約束したんだ。でも約束を果たせなかった。彼女を探してくれないか?」スジンは本を手に取材を始める。向かったのは、ソギョンが大学時代にボランティア活動をしていたという田舎の農村、スネリ。ソギョンの初恋の人ソ・ジョンインが働いていた図書館を訪れたスジンは、老人から「ジョンインはずっと昔に男と駆け落ちをした」という衝撃的な事実を聞く。ソギョンがスネリを訪れた遠い夏の日、この小さな村で一体何が起きたのか。それは想像を超えるほど切ない愛の物語だった。1969年、夏。農村でボランティアのためにソウルから田舎に向かう大学生グループの中に、若きソギョンの姿があった。朴正煕が経済を優先させる一方で、反体制的な大学を一時閉鎖するなど軍事政権の手綱を強めていた時代。ソギョンはプレイボーイを気取る問題児だった。参加した農村ボランティアで、サボってばかり。そんなある日、森に出かけたソギョンは伝統家屋を見つける。家の中には清楚で美しい女性、ジョンイン(スエ)がいた。彼女が図書館で落とした本『キョンアの花を折った男』をきっかけに、ソギョンはジョンインと徐々に親しくなり、恋に落ちる。村の図書館で働きながらたくましく生きるジョンイン。ソギョンは、ジョンインを村から連れだしソウルに向かうことを決心する。しかし、その夏の終わりに大学のキャンパスは政治情勢によって状況が一転、時代のうねりはふたりの愛さえも無残に引き裂いていった……。