[プロローグ]少女たちはなぜ死ななければならなかったのか。自らだけが生き残ってしまったという自責の思いを持つひめゆり学徒の生存者たちが、遺影の並ぶ暗い展示室で、若き友に今も語りかけている。[第一章 戦場動員と看護活動]生き地獄とも言える病院壕のなかで、献身的に看護をする生徒たち。人間の肉体がモノとして、ボロキレのように扱われるようになる戦場の中で、純真さを失わずに活動する生徒たち。しかし当の生徒たちは、自らの人間性が失われ、血も涙も流れない無機質の存在に変わりつつあることを自覚し、自問自答を続けていた。[第二章 南部撤退から解散命令]信じていたものが覆されたとき、大きなトラウマとなる。思春期の真っ只中で受けた心の傷は深い。[第三章 死の彷徨]組織が解体され、地獄の戦場にたった一人で放り出された。十代の少女たちが突然、自らの運命・生命に直接責任を持ち、向き合わなければならなくなった。3月の動員から90日間の犠牲者が19人に対し、解散命令後わずか数日で100余名が亡くなった。生存者がなかなか語れなかった人間の実相が凝縮している。[エピローグ]なぜ語り続けるのか。何が語らせているのか。戦争体験から受ける印象は悲惨だ。だが、ひめゆりの生存者からは、しっかり生きている強さを感じる。それは彼女たちの根っからの、明るさ、優しさ、そして生命への信頼感があるからだ。亡き友の命は今もつながっている。