坂口秋生(豊川悦司)は、閑静な住宅街で何の縁もない一軒家に侵入し、親子3人を鈍器で惨殺。まもなく警察とマスコミに自ら犯人であることを告げ、多くのテレビカメラに取り囲まれる大混乱の中、身柄を拘束される。偶然、自宅のマンションのテレビを通じてその逮捕劇を目にした遠藤京子(小池栄子)は、テレビモニターの中で謎めいた笑みを浮かべる坂口に一瞬で恋をする。すぐさまコンビニへ行き数冊のノートを購入した彼女は、一家惨殺事件に関する新聞記事のスクラップを開始。坂口に関するすべての情報を集めはじめるのだった。一方、逮捕後の坂口は、警察の取り調べに対し沈黙を貫いていた。国選弁護人として拘留中の坂口に接見した弁護士、長谷川(仲村トオル)は「思い出すのがつらいことでも、素直に話してください。私はあなたの味方です」と誠実に語りかけるのだが、坂口は何一つ言葉を発しなかった。初公判から熱心に裁判を傍聴していた京子は、長谷川に近づき坂口への差し入れを取次いでくれるようお願いする。見ず知らずの坂口に対して他人とは思えない親近感を抱いていると告白する京子は、長谷川には奇異な存在に映った。しかし、そんな彼女を気にかけているうちに、いつしか心惹かれるようになってしまう。ある日、長谷川と京子は坂口の唯一の肉親である兄の元を訪ね、坂口の不幸な生い立ちを知るのだった。長谷川の心配をよそに、京子は自分とまったく同じ孤独と絶望を内に秘めた坂口に対し、「あなたの声が聞きたい」と手紙に記し、ついに獄中で坂口との面会を果たすが……。