クリスマス・イヴを迎えたノルウェーの小さな町。結婚生活が破綻し、妻のトネ(クリスティーネ・ルイ・シュレッテバッケン)に追い出されたパウル(トロン・ファウサ・アウルヴォーグ)。サンタクロースに変装した彼は、かつての我が家に潜り込む。子供たちにプレゼントを手渡したい一心で……。パウルの友人の医師クヌート(フリチョフ・ソーハイム)は、二度と故郷に戻れないと言うコソボ出身のカップルの赤ちゃんを取り上げる。彼らの、切迫した事情に胸を痛めたクヌートは、自分でも思いがけない行動に出る……。少年のトマス(モッテン・イルセン・リースネス)は、家族とご馳走を囲むよりも、クリスマスを祝わないイスラム教徒の少女ビントゥ(サラ・ビントゥ・サコール)との時間を楽しむ。彼女の横顔をきらめく瞳で見つめながら……。カリン(ニーナ・アンドレセン=ボールド)は、不倫相手クリステン(トマス・ノールストロム)の“クリスマスが終わったら離婚する”という約束を信じていた……。今年のイヴこそ故郷に帰ると決意したのに、ヨルダン(ライダル・ソーレンセン)には電車賃さえなかった。雪の中をさまよい歩き、一台のトレーラーの前に辿り着くと、傍らに駐車してあるトラックのドアに手をかける。すぐに警報が鳴り響き、トレーラーから威勢のいい中年女性(イングン・ベアテ・オイエン)が飛び出して来るが……。一年に一度、とびきり大切なこの日に、それぞれが愛する人を求めて、それぞれの夜を迎える。だが、どこで人生のボタンをかけ違えたのか、彼らは躓いたり、立ち止まったり……。それでも少しずつ、小さな喜びを拾い上げては、再び歩き始める。今、イヴの夜が明け、それぞれがそれぞれの形で、“うち”に辿り着く。愛する人に“メリークリスマス”を言うために……。