それは、6月のある夜に始まった。小さな海水浴場アミティの浜辺には、気の早い若者のグループが焚火を囲んでビールを飲んだりギターをかき鳴らしてたわむれていた。その中にクリシーという女子大生がいた。波打際めがけて走り出し、一糸まとわぬ姿でなまぬるい夜の海に飛び込んだ。どんどん沖へ出る。やがて彼女何かが自分の足をひっぱっているような衝撃に襲われた。次の瞬間、水面から身体が浮き上がった。恐怖で声が凍って、クリシーの身体はかき消すように海面から消えた。彼女が最初の犠牲者だった。翌朝、アミティの警察署長ブロディ(ロイ・シャイダー)の家に電話がかかり、溺死者が出たとの報告が入った。浜辺に直行したブロディは、そこに打ちあげられているきりきざまれたような人間の肉体の断片を目撃し、吐き気を慌てて呑み込んだ。署に戻ったブロディは事故報告書の死因欄に“鮫に襲われて死亡”と書いた。ブロディは海岸に遊泳禁止の立て札を立てることを決意したが、アミティ市の市長ボーン(マーレイ・ハミルトン)が顔色を変えてやってきた。アミティは夏の間に海水浴場がおとしていく金で、住民が細々と残り1年の生活を成り立たせているような、典型的な宇美の町だった。海岸を閉鎖する事は大変な死活問題である。死因は鮫でなく漁船に巻き込まれたかもしれないというのがボーン市長の主張だった。検死官も市長の言葉に追従した。翌日の日曜日、大勢の人が浜辺にでて初夏の太陽を楽しんでいたが、ブロディの心は落ちつかなかった。やがて第二の犠牲者が出た。少年が海中に消えたのだ。少年の母親は復習のために3千ドルの賞金を出すという新聞広告を出した。同じ日に開かれた市議会では、海岸を閉鎖すべきか否かで激しいやりとりが交わされた。そのとき、会場の後からボソリとした声がした。漁師のクィント(ロバート・ショウ)で、1万ドル出すなら人喰いザメを殺してやろうという申し出だ。やがてブロディに援軍が現われた。若い海洋学者フーパー(リチャード・ドレイファス)だ。クリシーの遺骸をみたフーパーは間違いなく鮫の仕業で、しかも誰も今まで見たことがないような巨大な鮫だという。賞金につられてアミティの沖合いに群がった漁船の一隻が全長4メートル余りの虎鮫をしとめて戻って来た。人々はこれこそ人喰い鮫と騒ぎ立てた。しかしブロディとフーパーはクリシーの遺骸から虎鮫の口蓋が小さすぎると感じた。その夜、虎鮫の腹を切り裂いた二人の前に人間の肉片は発見されなかった。翌7月4日、アミティの海開きだった。早朝から海水浴場が続々アミティからやってきた。武装した見張りがボートに分乗し、ヘリコプターを配置してものものしい雰囲気だったが、その裏をかくように巨大な殺人マシーンは狭い水路をさかのぼり、その先の広い入江に向っていた。ボートに乗っていた若い男がまたたくまに犠牲になり、ブロディの子供もあやうく喰い殺されるところだった。海岸は閉鎖され、クィントは正式にやとわれた。彼の漁船“オーガ号”にブロディとフーパーの3人が乗り込んで、鮫殺しに出発した。数時間後、殺人マシーンが、姿を現わした。全長8メートルという巨大なホオジロザメで、体重は3トンもあろうかという信じられない怪物だ。クィント得意の武器である樽をつけた銛も、今度ばかりはまったく通じなかった。鮫は挑戦するように巨大な体をオーガ号にぶつけてくる戸、船底はたちまち破られ、水が入ってくる。もはやクィントはお手上げだった。フーパーは最後の手段として金の檻に入り、海中に入った。そこから強烈な毒を撃ち込もうというのだ。しかし、鮫にとって金の檻などマッチ箱にも等しく、たちまち破壊され、フーパーは海底にしずんでいった。オーガ号に対する鮫の本格的な攻撃が開始された。オーガ号は半分沈み、クィントがひとのみで喰われた。船に残されたブロディは、再度襲ってきた鮫に酸素ボンベをくわさせた。オーガ号のマストに登ったブロディはライフルでその酸素ボンベに狙いを定める。ものすごい爆発音がおわると、再び静寂が訪れた。そしてフーパーも船に戻ってきた。船は沈み、二人は木片につかまって岸に向かって泳ぎ出した。(ユニヴァーサル映画=CIC配給*2時間4分)