初老の男(デルジ・ヤーノシュ)とその娘(ボーク・エリカ)、そして年老いた馬が暮らす、人里離れた荒野の中の一軒家。唯一の収入源は馬と荷馬車だった。父は荷馬車仕事を、娘は家事を行なって日々を過ごす。暮らしぶりは貧しく、毎日は限りなく単調。熟練の動作と季節の変化、一日の時間によってリズムと決まりきった仕事が与えられるが、その重荷が残酷に彼らにのしかかる。日常生活には、時おり訪れる人々がいる以外、これといった事件は起こらない。だが、その単調な日常に微かな異変が起こり始める。木食い虫は鳴くのをやめ、馬はエサを食べず、ついに井戸が枯れる。そのため男は、娘と馬を連れてこの家を出て行くことを決意する。だが、2人と1頭は家の前の丘を登り切ったところで、何故か引き返してくる。とうとう火種もつき、男と娘は生のジャガイモの食事を前にして、ただただ沈黙するのである……。