口もきけなければ、耳も聞こえない2人の若者が、アメリカの西部の町に住んでいた。シンガー(アラン・アーキン)は彫版師、アントナパウロス(チャック・マッカン)は、いとこの食品店を手伝っている。2人は薄幸な身の上をかばい合う、このうえもない親友であった。しかし、精神薄弱気味のアントナパウロスは病が高じ、いとこの手で病院に送られてしまう。この日からシンガーに本当の孤独がやってきた。彼はアントナパウロスが入院している病院のある大きな町に引っ越し、ケリー夫妻の家に下宿した。夫妻にはミック(サンドラ・ロック)という14歳の娘がいる。彼女は、骨折した父の治療費を払うため下宿人をおかなければならない家庭の事情を知ってはいたが、自分の部屋を空け渡さなければならないことに不満を持っていた。そのために下宿人のシンガーを憎みさえした。やがてシンガーは新しい町で2人の友人を得た。その1人は、黒人の医師コープランドである。娘に背かれ、白人にはいわれのない憎しみを持っている男。彼もまた、心淋しい人間だった。シンガーとコープランドは人種の壁を超え、徐々に心を開いていった。そしてミックも、音楽をかけ橋にして、シンガーに親しみをおぼえていった。ミックは耳の聞こえぬシンガーに音楽の素晴らしさを何とか伝えようとし、またシンガーもミックのためにレコードを買ってやるのだった。けれども彼女は少しずつ大人に成長しはじめる年頃。シンガーを意識しながらも、家庭の経済状態から学校を退めなければならなくなり自暴自棄の行動に出てしまった。ほかの男に体を与え、シンガーを避けるようになったのだ。また、ある事件をきっかけに、娘との仲をこじらせていたコープランドだったが、彼が病気で余命いくばくもないことを知ったシンガーの尽力で、娘と和解する。父と娘が抱き合う姿を見たシンガーは、自分がもう彼らには必要のないことを悟る。そのうえ、親友アントナパウロスが、シンガーの努力にもかかわらず、知らぬ間に一人寂しく死んでいたことを知る。孤独に打ちひしがれたシンガーはついに自殺を決意する。それから数ヵ月後、シンガーの墓の前で泣いているミックの姿があった。「知ってほしいの、心からあなたを愛していました」。ミックは同じ言葉を何度も何度もくり返した。