チコはパリの地下を流れる水道の掃除夫として朝から晩まで碌々日の光りも見ずに惨めな生活を送っている若者の1人だった。彼は自分の素性さえも知らぬ独り者で、友達というのも同じ掃除夫の「溝鼠」とタクシー運転手のプウルだけだった。チコの生涯の目的は下水掃除夫から道路掃除夫に出世して日の光を浴びることだった。そして早くそうなるように彼は神に願ったが少しも効き目が無いので、ついに無神論者となってしまった。しかし彼は自分が偉い男だと信じていた。彼は貧民街の下宿屋の7階の屋根裏部屋に住んでいて、そこを第7の天国と名付けていた。ある日の夕方仕事を終えた彼が下水道の口から首を出すと、1人の可憐な若い女が年高の怖い顔をした女に鞭うたれて倒れていた。チコは大声を出して怒鳴りつけ小雀を荒鷲の手から救ってやった。彼女等は姉妹で姉はナナと呼ばれ妹はディアーヌといった。ナナが妹を虐待した理由は、南洋で巨万の富を掴んで帰国した彼女等の伯父が、姉妹が正しい善良な生活を営んでいるなら世話をしてやるといって、ブリサック大佐とシユヴィヨン師父とを介して交渉したのに、ディアーヌが姉の生活を真面目なものと思えなかったので、伯父の申し出を拒絶したことだった。ナナはそれを口惜しがり怒ってディアーヌを鞭うったのだった。チコはこうしてディアーヌを救った。警官に怪しまれた時も彼は自分の妻だと答えて彼女をかばってやったが、二人は清い関係のままだった。姉に強制されて惨めな生活を送っていたディアーヌには「第7の天国」が本当に天国のように思えた。親切な師父の推薦でチコは道路掃除夫になることが出来た。そして彼はディアーヌが彼を愛していることを自覚し「第7の天国」で2人は結婚式を挙げた。やがて欧州大戦が起こった。召集令状を受け取ったチコは、妻に別れを惜しみ、戦地に在っても毎朝11時にはおまえの許に帰って来ると云って出征した。やがてマルヌの激戦で負傷したチコが遂に名誉の戦死を遂げたという噂がのぼった。ブリサック大佐からの求婚されたディアーヌだが、一縷の望みをかけて夫の帰りを待つと言い張った。しかしチコの戦死が決定的となり、知らせを聞いた彼女は失神してしまう。ディアーヌが目を覚ますと、目の前に亡者となったチコが立っていた。抱き合う二人。第7天国で2つの魂は1つの魂となったのだった。