メリーとジムとは同じ大都会で別々に働いている二人であった。そして二人は同じ様に淋しかった。メリーは電話の交換手であった。ジムは滑稽新聞に携わっていた。日曜の仕事の余暇、その午後を二人は同じ様に海岸の遊園地へと出掛けた。そして二人は彼等の上に厭し被って来る孤独の淋しさから逃れて、楽しい時を過ごそうとしたのであった。その海辺で、ゆくりなく二人は近づきになり、それからは二人で共々にその日曜を送る事になった。二人は共に居る事によって互いに幸福を感じた。そして遊園地を遊び歩いた。が、そうした内に、観覧列車に何事か事件が突発して、群集がそれに殺到した為、二人は人々に押しへだれられ別れ別れになってしまった。それから二人は狂気の様になって互いを探し求めた。が遂に姿を見出し得ずに、二人は探すのを思いあきらめて淋しく各々の家へと互いに一人で帰って行った。二人は依然に増して淋しかった。儚い恋を得てまたそれを逃したが故に。家へ帰ったジムは、二人が海岸でダンスした時を偲ぶよすがにと、管蓄音機にその時の歌をかけた。すると隣の部屋で激しく壁を叩いてその歌を止めてくれと叫ぶ女の声がした。その声の主はメリーであったジムを見失ったメリーは想出の歌を今ジムと離れて聞くのが耐えられなかったからである。その叫び声。ジムはそれがメリーの声である事を知った。彼は酋予なく隣の室へと駆け込んだのであった。