スペイン・マラナの城主ドン・ホセは妻イソベルに裏切られ、それ以来、世の女性に対し全く信念を失い、一子ドン・ファンを抱え、放逸に日を送っていたが、ドン・ファンが10歳の折、愛妾の1人に刺されて死んだ。臨終に際して彼はドン・ファンに世の女性を信ずる勿れ、彼らの愛を弄べ、と遺言した。歳月は流れて、一人前の青年となったドン・ファンはピザの大学に学び、ローマに遊んだ。彼の美貌と才知はたちまちローマ前都女性の憧れの的となり、彼のため多くの女性は親に背き夫を棄てた。しかしドン・ファン自身は決して彼らの愛に溺れなかった。やがて彼はローマの執政ボルジアの妹、妖婦として知られたルクレチアと相知ったが、ルクレチア程の女も彼には翻弄された。それに続いてドン・ファンはデラ・ヴアーネズ公爵の姫アドリアナの清楚な姿に心を動かした。公爵はボルジアの反対派で、既にボルジアのため毒殺されんとしたところをドン・ファンに救われ、姫は大いにフアンに感謝していたが、ドン・ファンは姫をも誘惑せんとした。しかし姫は浮薄な一般の女性とは全く異なった操堅き純情の女性だった。さすがのドン・ファンも姫の崇高な精神美にうたれ、女性のすべてを侮辱していた我が身の行いを恥じた。ボルジア腹心の臣ドナテイ伯もまた姫の姿に心を動かし、その野心はボルジアの武力を得て遂に強制的に姫と結婚することになった。発奮したドン・ファンは結婚の当夜単身ボルジアの宮殿に乗り込み、剣の名手ドナテイと決闘の末彼を倒したが、ボルジアの家臣に捕らわれ牢獄に投ぜられ、暗殺に遭おうとした。しかし苦心の末首尾よく逃れ出て、同じく死の運命に悶えているアドリアナ姫を危地から救い、追い来る敵兵を馬上に倒して、姫と共に、故郷スペイン指して落ち延びて行った。