ホテルの一室。真夜中に目覚めた夢見る男レオス・カラックスは、部屋の壁に隠し扉を見つける。その扉は、汽笛とカモメの鳴き声が鳴り響き、顔のない観客で満席の映画館へ続いていた。彼らは一体、何を見ているのか……?早朝、大富豪の銀行家オスカー(ドニ・ラヴァン)が子どもたちに見送られ、スレンダーな女性セリーヌ(エディット・スコブ)が運転する白いリムジンに乗り込む。その日の予定を確認し、電話を済ませると、車内にある化粧鏡の覆いを外して白髪交じりのカツラを梳かし始める。パリで最も豪華なアレクサンドル3世橋に到着したリムジンから降りてきたのは、みすぼらしく腰の曲がった物乞いに変装したオスカーだった。道行く人々は、そんな彼に見向きもしない。次の場所へ向かう車内で、モーション・キャプチャーのスペシャリストへ素早く変装するオスカー。工場のようなスタジオで、女性ダンサーとともにエロティックなダンスを踊っていると、キャプチャーされた彼らの動きが、怪物が愛し合うアニメーションに変換される。続いて、怪物メルドに扮した彼は、墓地で撮影をしていたモデルのケイ・M(エヴァ・メンデス)と出会ったかと思えば、初めてダンスパーティーに参加した10代の娘を迎えに行くと、誰とも踊らなかったと聞いて激昂。さらに、アコーディオン奏者、スキンヘッドの殺人者、死にゆく老人と、想定外の出来事を合間に挟みつつも、その日の任務をこなしてゆく。そして、今日の最後の仕事は住宅街で家族と暮らす中年男性。セリーヌから1日のギャラと“今夜の鍵”を受け取って帰宅した家で待っていたのは、チンパンジーの妻と娘たちだった。“HORY MOTORS”のネオンサインが怪しく輝く車庫へリムジンを運び入れるセリーヌ。彼女が家路につくと、リムジンたちが話し始める。“人間は見える機械を望まない”“モーターを欲しがらない”“もはや行為を望まない”“アーメン”……。