びゅうびゅうと風が鳴る。標高3,200メートルの雲南地方の村に、3人だけで暮らす幼い姉妹がいた。長女、英英(=インイン)10歳。次女、珍珍(=チェンチェン)6歳。三女、粉粉(=フェンフェン)4歳。幼い三姉妹は、3人だけで簡素な家に暮らしている。母はだいぶ前に家を出て、父は町に出稼ぎに行っているからだ。近くに伯母さん家族やおじいさんがいるので、時々、仕事を手伝う代わりに食事を分けてもらい、長女のインインが妹たちの面倒を見て、家畜の世話や畑仕事をしながら暮らしている。お腹が空いたらジャガイモを食べる。チェンチェンの長靴は穴が開き、足が濡れて縮こまる。せっせとシラミ退治をする。ある日、父親が町から戻ってくると3人に笑顔が広がる。父さんが町に行ってから何年も体を洗ってないんだよ、とフェンフェンは無邪気に自慢。娘たちのために嫁さんを貰わなくてはと相談する、おじいさんと父親。父親は子どもたちを町に連れて行くことにするが、経済的な問題からインインだけ村に残す。町では子ども3人分の食費はとても稼げないからだ。チェンチェンとフェンフェンは父に連れられ、バスで町へ向かった。新しい靴を買ってもらって1人残ったインインは、近所に住む友だちの永高(=ヨンガオ)と馬糞拾い。おじいさんはインインに“娘は勉強よりも家の仕事が大事だ”と話す。大伯父さんの家で開かれた収穫を祝う宴では、ブタを1頭つぶして豪勢なごちそう。やがて、町の出稼ぎに見切りをつけた父親が、妹2人に加え、子守りの女性とその娘を連れて戻ってくる。一家は大人2人、子ども4人の大家族になった。子守りの女性は、いたずらっ子のチェンチェンに邪険な態度。父が畑仕事に行くと、女性と子どもは川で洗濯。“世界で一番ステキなのは、私のママ……。”繰り返し歌うチェンチェン。びゅうびゅうと風が鳴る。風に吹き飛ばされないよう、姉妹3人は地面を踏みしめて歩く。