ウンカとは、稲の汁を吸って枯らす「害虫」である。稲作の営みが始まって以来、常に田んぼに存在し、人々とウンカは稲を介して付き合ってきた。近年、このウンカがアジアの稲作地帯で猛威を奮い、問題となっている。世代交代が早く、環境にすばやく適応するウンカは、農薬やウンカ抵抗性稲品種にも次々と適応する。2010年、タイでは100万ヘクタールの水田が被害を受け、米の総収量が16%減少した。何がウンカをここまで「害虫化」させているのか。ウンカの暴走を食い止めようと、奮闘する生物学者達を記録。田んぼに確かに息づいている豊かな生物達の世界を描き、近代農業の歴史をひも解くことで、生物と種の多様性を軽視してきた現代農業を再考する。