港町マルセイユのとある酒場。店主セザール(シャルル・ボワイエ)、その1人息子の所へ集まる男やもめのパニース(モーリス・シュヴァリエ)や船長ブルン(ライオネル・ジェフリーズ)たちは「マルセーユこそ世界1の町だ」と語り合うのが常だったが、ひとりマリウスだけは遠い海の彼方に憧れていた。ファニー(レスリー・キャロン)は、そんなマリウスを愛していたが、海への冒険にとりつかれた彼からかえりみない淋しさに耐えていなければならなかった。ある日、思いつめたファニーがすべてを捧げてしまった後でマリウスはチャンスを掴み、ファニーを残し港を出て行った。ファニーは身ごもっていたが、それを承知でパニースが迎え入れた。マリウスの面影が忘れられないファニーにパニースは変らぬ愛をおくり、2年の歳月が流れて行った。ファニーの前にマリウスが戻って来たのは、その子セザリオの誕生日だった。ファニーは苦しんだ。1度は溺れかけた2人だったが、ファニーはパニースの愛にそむけなかった。マリウスも又去って行った。数年後祖母に連れられて港へ行ったセザリオは子供心に海へひかれた。それは父マリウスと同じ血の騒ぎだった。パニースが死の床についている頃、セザリオはマリウスの友人の計らいで初めて父子の対面をした。死を悟ったパニースはマリウス宛の手紙をファニーに托した。「君が、妻が一生愛した君が、私が死んだ後、妻と結婚してくれるならば私の魂に平和が訪れるだろう」と。もう誰の目にもマリウスとセザリオの喜々とした姿は父子として眺められた。