1922年度において最も多く売れた書物の1つはイギリスの小説家A・S・M・ハッチンスン著の「冬来りなば」であった。フォックスがその映画化権を獲て、イギリスへ出張撮影をした。イギリスではキャンタベリー地方で1922年5月から10月までかかり、10月から23年の5月までフォックス社のロング・アイランド撮影場で室内の場面が撮影された。脚色及び監督は「オーバー・ザ・ヒル」「神を忘れし町」と同じく、ポール・H・スローンと、ハリー・ミラードとがおのおの担当した。主役のマーク・セイバーには「死人無言」「星の歌」等に出演したイギリス生れのパーシー・マーモントが選ばれ、「沈黙の声」等出演のアン・フォレスト、「正道を歩め」のグラディス・レスリー、映画界には新顔のマーガレット・フィールディング等が対手役を勤め、「嵐の孤児」「百万弗の復讐」等のシドニー・ハーバート、「神を忘れし町」「舞姫悲し」等出演のレイモンド・プルーマーその他の人々も主要な役を演じている。文芸作品の完全に映画化されたことの本篇のごとく正確なのは少ない。人道主義高唱の雄大なる筋も、感激深いものである。