東京の60キロ東方にある成田国際空港。1966年、農村地帯であった成田市三里塚に、日本政府は事前交渉もなく、一方的に空港建設を決定。地元農民を中心にすぐに反対運動が組織され、学生や青年労働者が支援に加わる。当時のベトナム反戦運動などの時代を背景に、三里塚は激しい抵抗運動の舞台となった。だが、国と闘った人々が支払うことになる犠牲はあまりにも大きかった……。そんな国家権力に抵抗した人々の闘争を記録した「三里塚」シリーズは1968年から1977年にかけて計7本が制作され、その第一作「日本解放戦線・三里塚の夏」の撮影を担当した大津幸四郎が再び現地の人々にキャメラを向ける。小川プロが残したアーカイブ映像と大津が3年がかりで撮り下ろした現在の映像を自在に交錯させ、さらに写真家・北井一夫の写真集『三里塚』(1971年)の白黒写真と北井が本作のために撮り下ろした写真を挿入、当時の人々の生きざまと現在の思いを映し出していく。また、自宅と田畑を強制収用された大木よねの『戦闘宣言』を女優の吉行和子が、1971年に22歳で自死した青年行動隊リーダー三ノ宮文男の遺書を俳優の井浦新が朗読、二人の死者の真情を過去から現在へ口承する。