かつてバンドを組み、パンクな魂と共に生きていた伊藤博(マキタスポーツ)の心には今も“弾丸アームストロング”という曲が鳴り響いているが、現実は上から押しつけられる仕事を淡々とこなす中年サラリーマンのしがない日常が転がっているだけだった。一方、仲間と一緒にカツアゲを続けている不良高校生、黒田甲賀(池松壮亮)の根底にあるのは、警察官の父・晃司(羽場裕一)への屈折した想いだったが、それを吐き出す機会はなかなか訪れずにいた。そんな縁もゆかりもない二人だったが、偶然同じコンビニへと向かい、伊藤はストレスのせいかコンビニの前に停めてあった車を強奪。伊藤の行動に気付いた甲賀も突き動かされるように、バイクで車を追いかける。甲賀は伊藤を捕まえ、車の主に車を返そうとするが、もみ合う二人に聞こえてきたのは車の後部座席にいた赤ん坊の泣き声。伊藤と甲賀は、赤ん坊と車を返すため取引現場に向かうが、そこに現れたのは強面の男たちだった。直感で逃げ出した二人は、やがて赤ん坊がこの街の再開発に反対する政治家・大隈泰三(野間口徹)の子供で、彼の立候補を阻もうとする市長・犬養亨(佐野史郎)の指示でヤクザの浜口英雄(デビット伊東)が行なった偽装誘拐であることを知る。思い切って晃司に連絡したものの、警察さえも味方にはなってくれないことを直感した甲賀は、伊藤と共に自力で大隈の許に赤ん坊を届けることを決意する。だが何も知らない世間からは誘拐犯と疑われ、警察に追われる身となってしまった二人。こうして、赤ん坊を抱えながら伊藤と甲賀の果てしない逃避行が始まった……。