内気なヒロインが様々な決断を迫られる中で、心の殻を少しずつ破っていく様子を暖かいタッチで描く人間ドラマ。科学と人間の行動の間にあるものに魅了されていると語るベント・ハーメル監督によれば、『キッチン・ストーリー』(03)にも底流していた人間の行動のおかしみを、さらに発展させようとしたのが本作である。一粒のホコリも許されないような科学的測量の世界を象徴するごとく、画面には北欧デザインのように美しく端正な雰囲気が漂い、そこに緊張した人間の感情をほぐすような、ユーモラスで温かい空気が吹き込まれる。まさに完全なるベント・ハーメルの世界である。監督が初めて女性を主役に据えた本作のヒロインを演じるアーネ・ダール・トルプは、ノルウェーきっての人気実力派女優のひとり。劇場公開に先駆け、第27回東京国際映画祭コンペティション部門にて「1001グラム」のタイトルで上映された。